強引男子にご用心!

「伊原先輩。先程は助言ありがとうございましたぁ」

千里さんが近づいてきて、私の顔と、手にした書類とを見比べる。

「先輩。顔が赤いですよぉ? やっぱり具合悪いんですか~?」

「ち、違うわ」

それから、書類のメモと申請者の名前を見て、にんまりと笑われる。


「先輩、磯村さんに好かれてますねぇ」

「絶対に違う」

「えぇ~? そうですかぁ? 確かに磯村さんて女性関係だらしない感じですけどぉ、先輩には気を使ってるみたいなんですがぁ」


そりゃ、彼には潔癖症がバレてるし。

そういった部分では気を使ってくれてるかもね。

それに、二度も絡み合い目撃したし。

そう、そんな事もあった。

「そんなことより、仕事」

「はぁい。何だか週末に仕事をしたって気分になりましたねぇ~」

「語尾は伸ばさない!」

「すみません~。癖でぇ」

そんな感じでも、気がつけば週末はやってくる。

そうか、週末か。

何をしようかな。

カーテンを洗おうかな。
それともまたフローリングの溝を掃除しようかな。
ソファーのカバーは昨日洗ったし、どうしようかな。

そんな事を考えながら、通常業務は落ち着いて仕事が出来た。

「そういえば、千里さん」

「はい?」

「ありがとう。医務室に行けって言ってくれて」

「いえぇ。だって先輩疲れてたみたいですし~」

「そう、だったみたい……ね」

「明日はお休みですし、ゆっくり休んで下さいねぇ」

……何だか少し照れ臭いな。

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