強引男子にご用心!

こうしてみると、私って必要最低限の事しか話をしたことがなかった。

くだらない話は水瀬とはするけれど、趣味もないし、付き合い悪いし。

……そうか。
これくらいなら普通に話せるのかも。

これくらいなら、たぶん話せるようになったんだ。



そんな事を思いながら、退社後、いつものスーパーに買い出しに寄った。


「よぉ」

…………よぉ。

だから、何故、隣に磯村さん。

「今日は早いんですね」

「営業先から直帰。毎度残業してっと経理に言われるし」

「まぁ……。週50時間くらい越えると、水瀬からも言われますね」

「ああ、それで女医さん営業部に顔だしてたんだ。産業医ってそんな事もするんだな」

「人事や総務関係に近いですからね」


って、違うって。

どうしてこんなことをペラペラと、スーパーに来てカートを押しながら、並んで仲良く話してるんだ、私は。

これって普通?
普通になるのかな?


「夕飯は何にすんの?」

……って、磯村さんには通じないか。

「……カレーライス」

「いいなぁ。俺の分もよろしく」

「どうして磯村さんの分も作らないといけないんですか。だいたい……」

「うちに招待してやるし」

「結構です。だいたい、どうして私が磯村さんの家でカレーライス作らないといけないんですか。友達でもないのに」

「お隣りさんじゃねぇか」

「お隣りさんだからって、作りにはいかないでしょうよ」

「んじゃ、キスした間柄ってことで」


あ……


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