強引男子にご用心!
「意地張ってる女がタイプなんだよ。知ってんだろうが」
聞いたけれど。
「わ、私は意地張ってるわけじゃないですし、だ、男性を求めてるわけじゃないですし」
「本当に?」
「本当に!」
「じゃ。なんでキスに答えたわけ?」
え?
「二度目は答えてくれただろう? こじ開けなくても大丈夫だったし、舌も……」
し……舌?
「絡んできたし」
ニヤリと笑われて、背筋を何かが駆け抜ける。
嫌な感じではないけれど、ゾクリとした感触は慣れない感覚。
見ていた磯村さんの目が、からかう様な輝きから漆黒の闇に色を変え、どこか冷たさも感じた。
どこかで見た事がある。
何かで見たことはある。
その漆黒の闇は獣のもの。
冷徹に、冷静に、獲物を狙う獣の目。
「私………」
「あんた?」
「ご飯がいいです!」
一気に言うと、獣の目は無くなって、まわりの音も戻ってくる。
気がつけば、スーパーにいることを忘れていた。
だけれど、磯村さんは溜め息混じりに立ち上がって、
「少し触るぞ」
「へ?」
私の腕を掴むと、立ち上がらせてくれた。
「いつまでもこけてるんじゃねぇよ」
「あ、ありがとう」
触れられた腕が熱い。
熱くてムズムズして、変な感じ。
結局、スーパーから少し離れた洋食屋さんのオムライスを食べて、二人並んでマンションまで帰った。
なんだろう。
これって、普通の事なのかな?
よく、解らない。