強引男子にご用心!
告白?
少し忙しくなると、一日は早く感じる。
「伊原先輩。営業部の方の名刺発注。どちらに記入して頂ければいいんでしょうか?」
千里さんには懐かれたな……と思いつつ、口調の違いにキーボードを打つ手を止めた。
素直な彼女は、総務部以外の人の前では語尾を伸ばさない。
振り替えると、千里さんの奥に磯村さん。
「一番下の項目の、申請者名のところのみで問題ありません」
「あ。解りました」
千里さんが応対している間に、パソコンに向き直る。
ここ数週間で知ったこと。
さすがの磯村さんも、忙しそうにしていたら呼びつけて来ない。
来ても千里さんに任せる。
まぁ、内線電話はしょうがないけれど……
「伊原さん。そろそろ人事から採用関係の書類をまとめて欲しいってきてますけど」
牧君に呼ばれて、また顔を上げる。
「……まとめれるでしょう。去年やってるでしょう。どうして私に聞くの」
「伊原さん、邪険にしますけれど答えてくれるから」
へらっと笑う男の子は可愛くはないわよ?
冷たい視線を送ると、ちょっとひきつった顔をした。
「資料保管室から探してきなさいよ」
「え。僕、あそこ解りませんよ」
「いい経験ね。一度ホコリまみれになっていらっしゃい」
追い払うと、牧君は肩を竦めながら総務部を出ていった。
「伊原。最近はずっと部署にいるな」
課長に言われて、曖昧に頷く。
会社に出社して、ロッカールームで着替えると、総務部にいるのは確か。
お弁当もデスクで食べる。
そして忙しそうにしていれば、磯村さんと偶然にかち合う事もない。