強引男子にご用心!
「どうせ俺の柄じゃない。もうやめる」
「そ、そう……」
憮然とした顔から視線をそらして、エレベーターが止まると、逃げ出すように降りた。
降りた瞬間、腕を捕まれる。
「…………っ」
「直接触れたわけじゃない。まぁ、気絶してもらった方が、運びやすそうだが?」
ニヤリと笑う磯村さん。
合わさる視線は笑っていない。
笑っていないどころか…………
どこか邪悪。
「は、離さないと……」
「暴れても大声あげてもいいぞ?」
ぐいぐい引っ張られて、足が引きずられる。
待って、ちょっと…………
「解った! 話を聞くから、乱暴はやめて!」
「乱暴は…………いや、解らねぇな」
冷たい笑顔のまま、磯村さんはドアを開けると中に私を押し込んだ。
慣れない人のうちの臭い。
微かに漂うタバコの臭い。
腕を離されてよろめくと、背後でガチャリと鍵がかかる音がした。
頭が真っ白で、パニックで、呆然として磯村さんを見上げると、
「で、このまま運ばれるのと、自分の足で入るのと、どっちを選ぶ?」
いや。ここまで来ると拉致だよね!?
どちらかと言うと拉致監禁だよね!?
そしてそれは脅迫だよね!?
「よし、運んでやる」
「自分で歩きます!」
慌てて靴を脱いで、磯村さんの部屋にお邪魔する事になった。