強引男子にご用心!

「なんなのって言われてもな。惚れたもんはしょうがねぇだろうが」


「………………」


「まさか、それ疑われてたか?」


疑うっていうか……。


「困る!」

「なんで」

「私、触れないもの」

「ああ、まぁ、知ってっけど」

「そんなじゃ付き合えない!」

「だからなんで」

「触られたら拒否しちゃうもの!」

「それはしょうがねぇよな」

「最初は良くても、そのうち嫌になるのよ。嫌になって、嫌いになる!」

「断言するなよ」

「だって、元カレがそうだった!」

「うん?」

「最初はしょうがないって、潔癖症なんだししょうがないっていってくれたけど、そのうち好きなのにどうしてって……言うように…」

「ぉー…………」


磯村さんはビールをキッチンカウンターに置き、ゆっくりと近付いてくる。

「また俺は、あんたのトラウマに首突っ込んだみたいだな?」

ニヤリと間近で笑われて、ソファーに
しがみついた。

「トラウマじゃ、ない……です」

「少しは学習したか。落ち着いたな」

「は、はい」

確かだけど、前にこの展開になった時にはキスされたし。

しかも、ここ磯村さんの家だし。

相手のホームグラウンドで、勝負には出れないと言うか、迂闊な事は出来ないと思うし。


「今のでひとつ解った事があるぞ?」

「……何をですか」

「あんた、俺を好きだろう」

「好きじゃないです!」

「や。それはねぇな」

「その自信はどこから」

「好きな相手でも“過去に”触れなかったんだろ? しかも、“過去に”好きな奴に嫌いになられたんだろ?」

「……や」

「つまり、“今は”俺にも嫌われたくないって事だろ?」

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