強引男子にご用心!
軟派で○○な営業マン



「あ。おはようございます」

ニコニコ爽やか笑顔の営業部。

そうね。
営業マンは笑顔が大切ね。
大切だとはおもうけれど。

「伊原さんいますか?」

ニッコリ笑顔に騙された後輩が、ちらっと私を見るから見つかった。

彼女の背後ではニヤリとした磯村さん。

この人、裏と表の顔があるんだと痛感した今日この頃。

「何かご用ですか」

ツカツカと近づくと、邪悪なニヤリ笑いは引っ込んで、爽やかな笑顔を困らせると言う妙技を繰り出した。

「ミーティングにA会議室押さえてたと思うのですが」

「ああ。はい……」

会議室の使用表をめくって頷く。
確かに11時から、営業部のミーティングが予定として入っている。

「人数が増えまして、今からC会議室押さえれませんか?」

11時にAからC会議室に?

表を指で辿って眉間にしわが寄る。

時計は10時20分。
ちょっと難しいかな。
すでにC会議室は企画室が予定として使用中。

「今からですと難しいですね。Aですと椅子を増やせば10名入りますが」

「15名。やっぱり難しいですかね」

「15名ですか。外部の方もいらっしゃるミーティングですか?」

「そうですね。業者の人が……」

Aは定員8~10名。Bは5~8名。Cは15~20名がギリギリライン。
外部の人も出席者にいるのなら、あまりキツキツの場所に押し込む訳にはいかないし、かと言え、あまり広すぎてもミーティングとしては微妙なところ。

「E会議室でしたら空いてます。開始は11時からで問題ありませんか?」

「ああ、開始は……」

「でしたら、そちらに変えさせて頂きますが、少しお時間頂けますか?」

「……どれくらいかかりますか?」

「多少机の配置を代える程度ですから、そんなにはかかりません」

「ああ。でしたら宜しくお願いします」

磯村さんの了承が出たところで、営業部の使用会議室をAからEに訂正。
< 8 / 162 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop