強引男子にご用心!
軟派で○○な営業マン
「あ。おはようございます」
ニコニコ爽やか笑顔の営業部。
そうね。
営業マンは笑顔が大切ね。
大切だとはおもうけれど。
「伊原さんいますか?」
ニッコリ笑顔に騙された後輩が、ちらっと私を見るから見つかった。
彼女の背後ではニヤリとした磯村さん。
この人、裏と表の顔があるんだと痛感した今日この頃。
「何かご用ですか」
ツカツカと近づくと、邪悪なニヤリ笑いは引っ込んで、爽やかな笑顔を困らせると言う妙技を繰り出した。
「ミーティングにA会議室押さえてたと思うのですが」
「ああ。はい……」
会議室の使用表をめくって頷く。
確かに11時から、営業部のミーティングが予定として入っている。
「人数が増えまして、今からC会議室押さえれませんか?」
11時にAからC会議室に?
表を指で辿って眉間にしわが寄る。
時計は10時20分。
ちょっと難しいかな。
すでにC会議室は企画室が予定として使用中。
「今からですと難しいですね。Aですと椅子を増やせば10名入りますが」
「15名。やっぱり難しいですかね」
「15名ですか。外部の方もいらっしゃるミーティングですか?」
「そうですね。業者の人が……」
Aは定員8~10名。Bは5~8名。Cは15~20名がギリギリライン。
外部の人も出席者にいるのなら、あまりキツキツの場所に押し込む訳にはいかないし、かと言え、あまり広すぎてもミーティングとしては微妙なところ。
「E会議室でしたら空いてます。開始は11時からで問題ありませんか?」
「ああ、開始は……」
「でしたら、そちらに変えさせて頂きますが、少しお時間頂けますか?」
「……どれくらいかかりますか?」
「多少机の配置を代える程度ですから、そんなにはかかりません」
「ああ。でしたら宜しくお願いします」
磯村さんの了承が出たところで、営業部の使用会議室をAからEに訂正。