強引男子にご用心!

……磯村さん。

どこまで深読みする……。


「諦めろ。あんたも面倒くさい女だが、俺も相当面倒くさい男だから」


自分で言うかな。それ。


「覚悟はしろな? 待たないから」

ニッコリ胡散臭い笑顔にクエスチョンを浮かべる。


「やめたってさっき言った」

さっき?
確かにさっき、そんな事を言われた。


……けど?


「慣れるの待ってても逃げられるくらいなら、逃がさないから」

「………あ」

「ちなみに、泣こうがわめこうが、俺は気にしないからな?」

にっこりと、それはそれは壮絶な笑顔でソファーの背もたれに手をかけ、上から被さるように覗き込まれ……


気がつけば身体が震えていた。


だ、ダメじゃない?

これっていわゆる危機じゃない?

危機よね?


「とりあえず……」

「は、はい……」

「このまま押し倒されるのと、飯食いに行くのどっちがいい?」


どっちも嫌です。


「結局は、飯だろうな。行くか?」


コクコク頷くと、磯村さんは呆れたような顔をして、それからゆっくりソファーから離れていった。

「じゃ、何を食う?」

「…………」

「……あんた喋らす為には、俺はイラつかせないとならないのか?」

「……しょ、食欲が、ない」

「俺はある」

「なんでもいい」

呟くと、磯村さんは腰を屈めて、また私を覗き込む。

「無理強いはしない」

うん?

「でも、遠慮もしないだけだ。怯えた顔もいいが、あまり怯えてっと本当に襲うぞ」

「行けるお店少ない」

「ああ。それは考慮してやる」

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