強引男子にご用心!

……私だって28にもなるんだから、見た目と内面が一致しない人なんてたくさん知ってる。

水瀬は見た目は色香たっぷりの女医だけど、実はおでんと焼酎をこよなく愛する人だし。

見た目はクリクリ可愛らしい千里さんが、実はキャピキャピと牧君に仕事を押し付けているのも知っている。


以前、私の事を取り囲んできた営業事務の磯村さんのファンたちだって、きっと普段は可愛らしく仕事をしているんだろう。

すっと退くと、磯村さんの眉が上がった。


それから意地悪そうにニヤニヤ笑う。


「前にも言ったが、あんた解りやすいんだよ」

「何ですか」

「顔、真っ赤」

「う、うるさいです! そういうのって言わないのが大人ですから」

「いや? 言うだろ」

「言わないです!」


睨みあって、


それからしばらくして私が吹き出した。

笑いだした私を、磯村さんはキョトンとした顔で見ている。


見ているから、笑いながらしゃがみこんだ。



あー……もう。

解ってるし、知ってるし。

どこがどうしてか解らないけれど、

やっぱり、きっと好きなのね。


知ってたわよ、そんなこと。


鬼畜でスケベで口が悪くて、会社でいちゃつくような裏も表もある人だけれど。
どうしてそうなのか、そうなるのかなんて、全然、全く解らないけれど。


好きなら、もう、しょうがないと言うか。

……傷つけたくはないのも本当。

でも、傷つけられたくないのが本当。


ずるいから。

傷つきたくないから逃げ出して、全てに蓋をしてしまえば、見てみぬフリが出来たのに。

出来たのに……させてくれそうにない。

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