強引男子にご用心!
「落とし主は見つかったの?」
「いや。まだ見つかってねぇって」
ケラケラ笑う磯村さんを見上げて、ふとした疑問がわいた。
「磯村さん、知り合いです?」
「ん? 何、葛西と?」
頷くと、考えるように磯村さんが腕を組んだ。
「あんた、本当にまわり見ないし聞かないんだな」
ええ。
他人様とは、距離を置いてきぼりにして生きてますから。
噂話なんて、近くに寄ってコソコソする話じゃない。
決して大っぴらに大々的に話をするものではないし、そんな大きな声での噂話は、さすがに上司に止められます。
と言うか、私が注意します。
「俺と山本と葛西、大学一緒で同期入社なんだけど」
「……そんなことをいちいち覚えてませんから」
「まぁ、そんなもんだよな」
そんなもんですよ。
だいたい私なんて、同期って誰だった? レベルですからね。
「でも、噂になるくらいなら、そのハンカチって、会社で拾ったんですよね?」
「いや。正確には渡されたらしい」
「渡されて、持ち主みつけられないんですか?」
「あいつド近眼だからな。ちょうどコンタクトにゴミが入ったらしくて、涙でボロボロの時に渡されたらしい」
……なんて言いながら、意地悪そうにニヤニヤしたからピンと来るものがあった。
「もしかして、恋ばなですか?」
「ご名答。恋バナってやつだな。未だに密かに探してるらしい」
「へぇ~」