強引男子にご用心!
全然イメージわかないな。
だって、葛西さんていつもキッチリテキパキ秘書課を采配してるし、どこか人を寄せ付けないと言うか……
どちらかと言うと、同族的な……
それなのに、コンタクトにゴミが入って、涙でボロボロで?
ハンカチ手渡されて恋しちゃうの?
「……何だか、とってもベタな話ですね」
「なんだ、そのベタな話って」
「あ、いいえ。女の秘密です」
どこぞの少女漫画でも、今時そんなベタな話はないですよ。
まぁ、私も女子に囲まれるという、とてつもなくベタな経験談はあるけれど。
と、言うか逆だよね。
コンタクトにゴミが入った女性に、葛西さんがハンカチを差し出す姿なら想像できるけど、逆は思い浮かばないわ~。
「あいつは乙女だからな。なんたって大学時代の彼女に、年齢と同じ本数の赤いバラを渡した男だ」
「…………」
反応が別れそうなプレゼントですね。
喜ぶ人は喜ぶし、引く人は引きそうなプレゼント。
「つーか、華子」
「は……え。ええ?」
「他の男の話なんて、どーでもいいんだよ」
不機嫌そうに言われて眉をしかめる。
「自分で振ったくせに」
「噂なんか気にすんなって話じゃねぇか」
「……そう、だったかしら」
「そうだった」
そう。
そうなのね。
……何かしら。
不機嫌な顔をしたままの磯村さんを見ながら、少しだけ不思議……と、言うか、くすぐったい……と、言うか。
黙り込むと、磯村さんがまた意地悪そうな顔で笑った。
「照れることじゃねぇよ」
「そんなんじゃありません!」
「いや? 照れてるだろ」
「違います!」
「可愛いーなーお前」
「可愛くないです!」
ふはっと笑われて、顔が熱くなるのが
自分でも解る。
解るけど……!
「自分で言うなよ」
笑われるから、ぷいっとそっぽを向いた。
向いたけど、覗き込まれて思わず吹きだした。
「何だか妙なんですもん」
「そうでもねぇけど」
「妙ですって」
「どっちでもいいけど」
どっちでもいいの?
「まぁ、デートって言って、否定されなかったからいいか」
…………いいのか。
「じゃ、付き合うって事で、よろしく」
「…………」
なんて答えればいいでしょう?