妹と彼氏が××してました。
馬鹿みたいに騒ぐ蝉の音ととろけるような暑さが、私の思考を停止させる。もう4時だというのに何だろうこの暑さは。
それでもいまだに耳にはりついて離れない妹と彼氏の声を忘れられるようにと早足で歩いていたせいか、普段は20分もかかるバイトへの距離が短く感じられた。
『居酒屋 柚』
まるでカフェのような茶色のしゃれたたたずまいに、緑のツタのアーチ。居酒屋にしてはオシャレな雰囲気のこの店が今日の私の職場である。
『居酒屋 柚』は全国展開されている居酒屋店でわりとリーズナブルな価格で女性も楽しめる居酒屋だ。私のいつものバイト先もこことは違った雰囲気の良さだ。
私は、美しい花の形をした扉を開くと、目の前には阿鼻叫喚。
例えるならば地獄、いや戦場が広がっていた。
うん、これ比喩表現じゃなく本物の『地獄』である。
店内は、人人人。店員の顔は笑顔だが、ホールの裏では皆無表情だ。辛い、本当に辛い。発狂者が出るレベルで辛い。
ありがたいことに今日も客の入りは良いようだ。
お客様に一礼しながら、ホールの裏へ入ると、
「美鈴(みすず)ちゃーん‼︎」
このオシャレな雰囲気にとてもあっているふわりとした金髪の男性がが駆け寄ってきた。ううっイケメンオーラ…
「こんにちは、マスター。お久しぶりです、今日はよろしくお願いします」
「こんにちは。今日は制服か。良いね、とっても良い」
マスター、あんたは犯罪者か。なにがとってもいいのか気になるが、聞いたら何かが崩れそうな気がするのでやめた。
私は優しいと思う。
「えぇっ…と。うん。裏方、入りますね」
「待って。美鈴ちゃん」
「はい?」
おもむろにマスターの手が私の頬に近づく。
「目、腫れてるよ?」
…私は、時々この鋭いマスターが苦手だ。せっかく忘れようとしているのに引っ張り出さないでよ。
心の声が聞こえなくてよかったなんて、そう思う。
「寝不足ですかねえ…大丈夫です。それより、裏方入りますんで」
私は、笑えてる。
それでもいまだに耳にはりついて離れない妹と彼氏の声を忘れられるようにと早足で歩いていたせいか、普段は20分もかかるバイトへの距離が短く感じられた。
『居酒屋 柚』
まるでカフェのような茶色のしゃれたたたずまいに、緑のツタのアーチ。居酒屋にしてはオシャレな雰囲気のこの店が今日の私の職場である。
『居酒屋 柚』は全国展開されている居酒屋店でわりとリーズナブルな価格で女性も楽しめる居酒屋だ。私のいつものバイト先もこことは違った雰囲気の良さだ。
私は、美しい花の形をした扉を開くと、目の前には阿鼻叫喚。
例えるならば地獄、いや戦場が広がっていた。
うん、これ比喩表現じゃなく本物の『地獄』である。
店内は、人人人。店員の顔は笑顔だが、ホールの裏では皆無表情だ。辛い、本当に辛い。発狂者が出るレベルで辛い。
ありがたいことに今日も客の入りは良いようだ。
お客様に一礼しながら、ホールの裏へ入ると、
「美鈴(みすず)ちゃーん‼︎」
このオシャレな雰囲気にとてもあっているふわりとした金髪の男性がが駆け寄ってきた。ううっイケメンオーラ…
「こんにちは、マスター。お久しぶりです、今日はよろしくお願いします」
「こんにちは。今日は制服か。良いね、とっても良い」
マスター、あんたは犯罪者か。なにがとってもいいのか気になるが、聞いたら何かが崩れそうな気がするのでやめた。
私は優しいと思う。
「えぇっ…と。うん。裏方、入りますね」
「待って。美鈴ちゃん」
「はい?」
おもむろにマスターの手が私の頬に近づく。
「目、腫れてるよ?」
…私は、時々この鋭いマスターが苦手だ。せっかく忘れようとしているのに引っ張り出さないでよ。
心の声が聞こえなくてよかったなんて、そう思う。
「寝不足ですかねえ…大丈夫です。それより、裏方入りますんで」
私は、笑えてる。