偶々、
ぎゅうぎゅう詰めの吸い殻の手前、彼のすぐ横に立ち鞄からタバコを出すのも一苦労する程で、付けたタバコから揺らめく煙を吹き消した。


「そうだ、ちっとも点かなかったのに、このライター点いたんですよ」

わたしはすぐ隣で押されて密着している彼にそう言って、点けて見せる。


「良かったじゃないですか。でも、ライターはあげますよ。また点かなくなったら困るでしょ?」

困ると言えば困る。この後、ライターが点かなければ喫煙席を取った意味がなくなる上に、車内で他の人が吸っているのだから当然吸いたくもなる。


1時間、2時間吸わなくったって、もちろん平気だ。仕事をしていればそのくらいの時間吸わないことだってある。

周りが吸っていて我慢できる自信はない。借りてまで吸おうとは思わないが、それは状況次第だ。
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