偶々、
自分と同じ機種だからと目につくのかもしれない。もちろんみんながみんな同じではないが、電車内で操作しているスマホの機種はこれが多い。


これは偶々、ではないと言い聞かせるように、彼に見せただけだった。

しかし、彼から発せられた言葉はそれを否定した。


「でも、このカラーじゃなくて、白や黒でしょ?」

と。まるで、みんなのとは違うとでも言いたいかのように。


「白とシルバーが多い…かもしれないですね」

職場の上司たちがこのカラーを持っているからか、そうは思えなかった。だけど、彼の言う通りこの色を持っている人は少ない気がした。


「赤って目立つからすぐわかるんだよね、街で見ても」

スマホを裏に返しマジマジと見たのち、ポケットへと戻される。わたしも同じことをして、短くなったタバコを吸い殻へと落とし喫煙所を出る。
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