偶々、
「いやいや、そちらこそわからないですよ、こっちの人だってこと。って、僕は田中です、田中 裕太って言います」


「あ、わたしは高山 由美と、言います」


揃って頭を下げて、よろしくお願いします。なんて、まるでこれからお見合いなんですと言わんばかりのよそよそしい挨拶を交わす。


「…かれこれ30分は経つのに自己紹介て、遅いですよね?」

頭を掻いて申し訳なさそうにする田中さんも見慣れてきた。


「ほんとですね、でも、きっかけを探してはいました」


「…ですよね、僕もタイミングを図っていたのですが、気が効かなくてすいません」

また顔を下に向けた田中さんに、わたしは慌てて彼の前で両手を左右に振る。


「いえいえ、謝らないでください。お世話になったのに、自分から言い出さなかったわたしも気が回らなかったのですから」
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