偶々、
車両の先頭、16号車の乗車口まで人の間を練り歩く。20分の遅れだからまだまだ目的の列車は来ないのはわかってはいても、寒さでじっとしていられなかった。

ホームの先には紺色のコート姿の男性が1人ぽつんと佇んでいて、他の人たちは椅子や売店の周りを囲むように身体を揺すっている。


乗る予定の新幹線は20時36分発。現在20時15分。電光掲示板にすらまだ登場していない。

ここにいても無駄だと、また来た道を戻り喫煙所を覗いてみた。人が出てきて、その隙間を縫うように身体を滑らせる。


ようやく、一息吐きタバコに火を灯そうとした。


カチッ、カチッ。…カチッカチッカチッ。

ここに来て、ライターが不機嫌なのか、オイルはあるのに火が点かない。
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