偶々、
「え、なんで?」

思わず声に出してしまい、何度もライターと格闘しているわたしに鬱陶しそうに背後から咳払いが聞こえてくる。


「ごめんなさい…」

そう、小さくなって喫煙所を出ようとした時。


「はい、どうぞ」

横から伸びてきた腕、手にはライターがあり、その声の主は先程ホームで1人で立ちすくんでいた男性だった。


顔を歪ませながら無理な体勢をしてまで、差し出されたライターを受け取らないわけにはいかない。


「あ、ありがとうございます」

せっかくなので、そのライターを借り皺々になってしまったタバコに素早く火を点けてライターを返す。


「助かりました、ありがとうございます」


「いえいえ、お互い様なんで」
< 3 / 41 >

この作品をシェア

pagetop