偶々、
普段なら借りてまで吸おうとは思わないのだが、外で順番待ちをする人がいて、溢れている喫煙所にやっと入り込んだのに、吸わないで出るなんてできなかった。


「それ、あげます。まだあるから」

自分のジッポを見せ、借してくれたライターは受け取らず、タバコの煙を吐き出して。


「いいから、どうぞ」

と、どのくらいの時間あのホームにいたのか、寒さで鼻を紅くした笑顔を見せたから、素直に頂くことにした。


喫煙所を出た後も彼にお礼を言い続け、その男性はまたホームへ。

わたしは階段を下りお土産を早く買ってしまったことに後悔しつつ、二度目のお手洗いへ。



それでも過ぎたのはほんの僅かな時間だった。
< 4 / 41 >

この作品をシェア

pagetop