☆☆☆ 暴れキャンディ ☆☆☆
第二章 心臓停止には申し分ない

 箸矢涼は言葉が出なかった。
 明らかに大絶叫するべき場面なのだが、言葉が出なかった。
 箸矢の鍛え抜かれた左の上腕二頭筋が、クラスメートである、涼風茶碗子の顔に変わっていたというのに……。

 意味不明。
 時間を戻す。

 とある木曜日の午後七時半。
 高校二年生の箸矢はいつも通り帰宅し、いつも通り制服を壁に掛け、いつも通り和室に直行した。
 この四畳半の和室で腕立て伏せをすることが日課である。
 Tシャツを脱ぎ捨て上半身裸になった。
 
 その刹那何か視線を感じた。
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