素顔のマリィ
後から聞いた話。
わたしの母は流加の母親から転校の話を聞いていたらしい。
まぁ、常識的に考えて、娘が毎日朝から晩まで一緒に遊ぶ子の家庭に、興味を持つのは当然のことかもしれない。
細かい事情はさて置いて、父親の職がアメリカで決まったので、向こうの新学期に合わせて転校するという事は前もって決まっていたことらしい。
なんで教えてくれなかったの、と訊ねたら「だって、教えたら真理も一緒に行くって言いかねないなと思って」と母は笑っていた。
流加の両親も、転校のことは内緒にしていたらしい。
きっと流加のことだから、飛行機に乗りに行く、なんて言葉一つで、何の疑いもなく海を渡ってしまいそうだ。
それから暫く、わたしの鬱気分は抜けなかった。
何をしても流加を思い出し、流加を身近に感じて涙し、もうどうしていいか分からなかった。
あれは恋とも愛とも違う、友情なんて半端なものではない不思議な気持ち。
わたしの一生分の感動と喜びは、流加と過ごした一夏で終わってしまったみたい。ほんと、大袈裟じゃなく。
流加は遠い異国の地で、どう感じていたのかな。
彼のことだもの、目新しい冒険が山積みで、わたしのことなんか思い出す余裕もなかったかもしれないな。