素顔のマリィ
「でも彼女、ほんと良く似てるわね」
何気なく安西さんが発したその一言が、なんとなく引っかかったけれど。
その時のわたしは、流加の今が気になって、自分のことなどどうでも良かった。
今、流加が何処で何をしているのか。
どんな絵を描いて、どんな暮らしをしているのか。
大人になった今、わたしはそれを知る手立てがある。
二人の関係はとうに終わってしまったとしても、わたしは流加の描く絵が好きだ。
今こうしてこの空の絵を目にしただけでも、こんなに心が揺さぶられるのだ。
彼の今描く絵をみたら、どんな気持ちになれるのか?
不安になるのか、ワクワクするのか。
悲しくなるのか、それとも楽しくなるのか。
たとえ流加の傍にいられなくても、彼の絵をいつも見ていることができたら。
わたしは愛を感じられる。
そう思った。