素顔のマリィ
「じゃ、山下さん、僕はこれで失礼します。
なんか仕事の邪魔しちゃったみたいだな、申し訳ない。
でも、安西、久しぶりに会えて楽しかった」
「こんどゆっくり飲みにでも行かない?」
「生憎と忙しい身でね。
だいたい、僕みたいなつまらない人間は、たまに会うから面白いと思うんだ」
「まぁ、誘いを断るのがお上手ね」
相変わらず人付き合いが悪いんだから、と安西さんは笑っていたけど。
まさか、あんな綺麗な人の誘いを断るとはっ!
「西園寺くん、明日からの出張は、もしかしてイギリスかね?」
「よくおわかりで」
「あのアパートが取り壊されるとはな」
「立ち退き費用に加算して、また何処かに新しい社宅を探さないと。
ついでに山地くんの様子もみてきます。
頑張ってやってるようですよ」
「そうか、それはいい」
山地の名前が耳に飛び込んできて、懐かしい思いに襲われる。
彼のことだ、何事にも上手く立ち回って、頑張ってやっていいることだろう。
それより今は流加のことが気になった。
どうにかして、情報を得なければと考えを巡らせる。
わたしは久々に興奮していた。