素顔のマリィ
「坂井くん?
いや……、マリィと呼んでも良いかな?
君は山下さんのお孫さん、つまり大輔の妹の桜に、とても良く似ているんだ」
「えっ?」
なんで、このタイミングでそんな話をするかな?
というより、彼がわたしをマリィと呼んだことに戸惑っていた。
なんで、その呼び方を知っているの?
「僕は桜と付き合っていた」
「えっ?」
「一つ下の桜とは、中学が一緒でね。幼馴染ということもあって、とても仲が良かったんだ。
あの旅行も、ホントは僕も行くはずだった。高校合格祝いに彼の両親が企画してくれた旅行でね。
ホントは僕も山下の爺さんも一緒に行くはずだったんだ」
「なんで、そんな話を……」
「君には知っていて欲しい。
山下さんは仕事、僕は西園寺家の法事が重なって行けなくなった。
そして、あの事故が起きた。
山下さんは一瞬で大切な家族を失った。
僕は親友と恋人を失った」
だから、彼と僕は戦友なんだ。
西園寺要はそう言って唇を噛み締めた。