素顔のマリィ
「でも……、小学校6年の時、母が病気で死んだんです。
今から思えば、癌だったと思うのですが。当時の僕には突然の出来事で。
僕はそのまま、父の本宅に養子として引き取られ、西園寺を名乗ることになりました」
すいません、話が長くなりますね、と常務は少しだけ顔を歪めて苦笑いする。
「その時から、僕は頑張ることを止めました。
本宅には僕の異母兄弟がいて、苛められこそしませんでしたが、冷ややかな目で見られていたし。
父は子供に期待はしても、愛を注ぐタイプの人ではなかったので。
そんな僕が、それでもぐれずに今に至るのは、大輔や桜がいてくれたお陰なんです」
彼らこそ、僕の本当の家族のようでしたから、と常務は溢れる涙を必死に堪えて黙ってしまった。