素顔のマリィ

薄々、常務の気持ちには気付いていた。

だけど、気付かないフリをしてきたつもりだ。

それなのに、こんな状況で告白するなんて反則だと思う。

これが大人の駆け引き、というものなのかもしれないけれど。

「山地くんをイギリスへ遠ざけたのも、僕だ。

君をみすみす彼に渡すわけにはいかなかった。

だけど、山下さんに言われたよ。そんなことをしても無駄だとね。

君を力づくで自分のものにしようと考えてるわけじゃない。

いくら僕が好きでも、君に好かれなきゃ意味がないからね」

じゃ、なんで、わたしに告白するんですか?

「君も本当はわかってるんじゃないか?

僕達はとても良く似ている。

永遠の愛など信じない、と思っている反面、自分はずっと一人の人を想い続けている」


この人は、何を言っているのだろう?


「僕は君より少しだけ長く時を生きてきたからわかるんだ。

今より大切なものはない。

過去の想いに固執するのは、現実の逃避でしかないんだよ」

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