素顔のマリィ

彼は多分、流加のことを言っているのだと思った。

安西さんから聞いたのか、山下さんから聞いたのかはわからないけれど。

わたしのとった行動は、社内メールや通信記録を調べれば直ぐにわかることだ。

はっきりと名指しされたわけではないが、それが余計に痛かった。


「それでも……、それでも、忘れられないんです」

わたしの頬には涙が伝っていた。

「わかるよ、その気持ち。

はっきりと区切りをつけたわけじゃないからね。僕も桜のことを想うと胸が痛い。

でも、同時に君のことを愛しいと思ってる」


それから運ばれてきた雑炊を二人で分けて食べた。

常務は泣き止まないわたしの背中をいつまでも優しく撫でてくれた。

愛されている実感が染み渡る。

この人は、本当にわたしのことを愛してくれているのだ。
< 141 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop