素顔のマリィ

そのまま抱き寄せられて、口を塞がれた。

「口付けは魂の交換だ。

マリィ、心を開いて」

捻じ込まれた熱い舌がわたしを溶かしていく。

わたしはもう立っていられないくらいに彼を感じていた。

「上へ行こう」

彼に抱きかかえられるように専用エレベーターで部屋へと上がる。

そこに待っているのは、多分、わたしが今まで経験したことのない密な時間だ。



肌を重ね溶け合って、夜通し続いた魂の交換はわたしを異次元へと誘った。

「マリィ」と呼ぶ彼の声が、流加のそれとは違うとわかってはいたけれど。

呼ばれる度に疼く心が、わたしの感度を上げていく。


「あぁ……」


絶頂を越えた果てに見えたのは、動物としての自分。

その向こうに愛が見えるなら……

わたしは向こう側へ行って確かめなくてはならない。


「マリィ、僕だけを見て……」


でも……、どうしても心がついていかない。

わたしは、彼の腕に包まれながら、一人涙をながしていた。
< 143 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop