素顔のマリィ


「マリィ、僕達、結婚しないか?」


突然のプロポーズは、彼なりの演出だったのかな。


「僕も34だ。そろそろ身を固めたい。

結婚するなら、君しかいない。

どうか僕と結婚してください」

緊張した面持ちで、まるで用意されたかのような台詞を棒読みして、要はポケットから小さな箱を出した。

机の上にコトリと置かれたジュエリーボックスには、びっくりするほど豪華な指輪が納まっていた。


「わたし……」

「返事は直ぐにとは言わないよ。

移動したばかりで、マリィも忙しいのはわかってる。

でも、これからの僕達の関係は未来を見据えたものであって欲しいんだ」

「指輪、受けとってくれるね」と、要はその豪華な指輪をわたしの平凡な左手の薬指にはめてくれた。


心づくしの演出に抗う女がいるだろうか?

愛されている。

そう思うと心が揺れた。


愛されるより、愛したい。


そう願うのはわたしの心ばかりで、身体はいつも現実に正直なのだ。

あぁ……

< 158 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop