素顔のマリィ
「マリィ、僕達、結婚しないか?」
突然のプロポーズは、彼なりの演出だったのかな。
「僕も34だ。そろそろ身を固めたい。
結婚するなら、君しかいない。
どうか僕と結婚してください」
緊張した面持ちで、まるで用意されたかのような台詞を棒読みして、要はポケットから小さな箱を出した。
机の上にコトリと置かれたジュエリーボックスには、びっくりするほど豪華な指輪が納まっていた。
「わたし……」
「返事は直ぐにとは言わないよ。
移動したばかりで、マリィも忙しいのはわかってる。
でも、これからの僕達の関係は未来を見据えたものであって欲しいんだ」
「指輪、受けとってくれるね」と、要はその豪華な指輪をわたしの平凡な左手の薬指にはめてくれた。
心づくしの演出に抗う女がいるだろうか?
愛されている。
そう思うと心が揺れた。
愛されるより、愛したい。
そう願うのはわたしの心ばかりで、身体はいつも現実に正直なのだ。
あぁ……