素顔のマリィ

それでも身体は正直だ。

要に抱かれれば、わたしの身体は容易に反応してしまう。

それが動物としての本能だ、エロチシズムだ、性の解放だ、と色々御託を並べてみても、わたしが只のふしだらな女であること意外の理由が見つからない。

「かなめ……、いく……」

「マリィ、愛してる」

かみ合わない言葉に要が気付いていたのかどうか。

次第に激務と化していく編集業務の中で、わたし達の遭瀬は週に一度から二週に一度へ、終には月に一度へと落ちていった。


「やっぱりマリィを編集部へ入れたのは失敗だったかな」


ある時、不用意に要の呟いた言葉がわたしの箍を外した。

「やっぱり?」

聞き捨てならない発言に、わたしの敏感な自尊心が傷つけられたのだ。

「マリィ、僕は君がいないと生きていけない」

「やっぱり移動は要の差し金だったわけ?」

「マリィ、そこは怒るところじゃないだろう」

「わたしは自分の力で認められて、自分の力で立って歩きたいの」

「マリィ、君は十分自立してると思うよ」

「違う、全然違う! あなたはわたしを懐柔しようとしてる。

やっとわかったの、あなたの本性が」


「マリィ、僕は君を心から愛してる」


彼の言葉に嘘はない。

でも、彼は自分に嘘をついている。
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