素顔のマリィ
そのまま部屋を飛び出した。
要はわたしの後を追いかけたけど、わたしの脚は速かった。
元陸上選手だんもん。
捕まらないよ。
久しぶりに駆け抜ける風は懐かしい匂いがした。
初夏のむせるような緑の匂い。
ここにも新緑が芽生えているんだ。
小さな公園を見つけてベンチに腰掛けた。
わたしの馬鹿。
もうとっくにわかっていたでしょうに。
今更要に当たるなんて大人気ないよ。
頬を伝った涙が、風に吹かれて冷やりとした。
情けない。
涙が止まらない。
自分の力で立って歩きたいなんて去勢。
わたしは何時だって一人じゃ生きられない弱虫なんだ。
愛せないんじゃない。
愛されることを優先してきたのはわたし。
振り回されていたのは、わたしじゃなくて彼らの方だ。
情けない。
こんなに一人が寂しいなんて。
気付きたくなかったよ。