素顔のマリィ

またしても関係から逃げ出したわたし。

別れ話も婚約破棄もそのままに、わたしは要との連絡を絶った。

会えばまた引きずられる。

そう確信したからだ。

と言っても会社には行くわけだから、なんとも中途半端な状態だ。

時折、「会いたい」と要からメールが届いた。

着信拒否にしなかったのは、彼が会社の常務であり、わたしの首を左右する立場にあるからだ。

彼がわたしを首だと言えば、きっとわたしは解雇される。

卑怯だな、わたし。

全然潔くなんてないし。

それでも強気の姿勢を貫いていられたのは、要がわたしを大切に思ってくれていたからだと思う。

わたしがはっきりと別れ話を持ち出さないことに、要は一縷の希望を抱いていたに違いない。

甘いな、わたし。

半人前もいいとこだ。

その反省を仕事にぶつけ、わたしは業務に没頭していった。


一人で生きていくってたいへんなことなんだ。
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