素顔のマリィ
「よっ、久しぶり」
クリスマスを目前にした12月の末、編集部に突然山地が姿を現した。
「えっ、山地? 幽霊じゃないよね」
あまりに急な出現に、驚きを通り越して、その事実が俄かに信じられなかった。
「俺を勝手に殺すなって」
そんな憎まれ口も懐かしい。
「確か、来年辺りに一次帰国って」
「だから、クリスマス休暇と年末年始休暇を兼ねて一次帰国だろ」
「なんだ、要するに休暇ね」
「バカヤロウ、俺は今まで無休で必死に働いてきたんだ、それくらい許されるだろ」
「だねぇ〜、全然音沙汰もなかったもんね」
っていうのはわたしなりの嫌味。
実際、山地からの連絡はこの二年で、こないだのメールが一通だけだ。
「今晩つきあえ」
「えぇ〜、随分急だね」
「仕方ないだろ」
「定時には上がれないよ」
「それでもいい、待ってる」
強引なのは相変わらずだ。