素顔のマリィ
「それより、お前と常務の噂、イギリスまで届いてるぞ」
「えっ、どんな?」
「玉の輿、シンデレラストーリー?
マジで結婚するのか?」
「わかんない。迷ってる」
「好きなんだろ?」
「わかんない」
「お前なぁ〜」
「正直困ってる。恋に浮かれる歳でもなくなったし。
結婚って言われて、将来が現実味を帯びてきて。
彼は良い人だし、肩書きも申し分ないし、何よりわたしを愛してくれてる」
「なにが不足なんだ」
「足りないのは彼じゃない。わたしの方。
彼のこと、愛しているのかどうか自信が持てないの」
「マリ、まだそんなこと言ってんのか」
「えっ?」
「俺との時もそうだった。
お前は身体は簡単に許しても、心は頑なに守り通してたもんなぁ。
こら、今なら冷静に聞いてやる。
吐け、お前の本音を吐いてみろっ!」
無理矢理長期休暇をとって日本に帰ってきた山地は、わたしのことを本気で心配してくれていたのかもしれない。