素顔のマリィ
思えば、かなり無理矢理な理屈で、わたしは鈴木健太を好きになろうとやっきになった。
友達と一緒に、市民球場で行われる練習を見に行ったりもした。
スタンドから眺めていると、気がついた鈴木君が大きく手を振ってくれたりして。
彼は長身で、ピッチャーを務める、所謂チームのエースだった。
わたしの他にも、他校のファンが何人か見学に来ているのがわかった。
彼がピッチング練習を始めると途端に色めき立って、奇声を上げているので分かり易すかった。
そんな彼女達とは対照的に、静かに練習を見守るわたし。
男子が真剣にスポーツに熱中する様は見ていて気持ちの良いものだった。
でも、見るよりやる方が楽しいに決まっている。
そこに参加できない自分がもどかしくもあり、ただ見る立場に甘んじている自分が情けなかった。
確かにカッコいいのは認めるが、好きになるには、何かもう一つ決め手に欠けていた。
意外性とか、わたしの好奇心をくすぐる何かが。
だから、わたしは必死になって、自分に都合のいい彼の意外性を探していたんだ。