素顔のマリィ
「わたしね、今でも忘れられない人がいるの」
「初恋か?」
「そうだね、多分、初恋の人」
「つまんねぇ〜」
「小学校の同級生。凄く仲良しで毎日一緒に遊んでた」
「それって単なる思い出の美化なんじゃねぇ?」
「彼が突然姿を消して、悲しくて悲しくて、わたしその時思ったの。もう誰も好きなれないって」
「小学生からずっと?」
「勿論そんなの一次的なものだった。わたしはその後も人を好きになったし、いつの間にか彼のことも忘れかけてた。
でも、その彼と高校で再会したの」
「運命の再会、ってやつか」
「彼は昔と変わらずわたしを魅了して、わたしは彼に本当の恋をした」
「でも、今は奴はここに居ない」
「高校三年の夏休み明けに、彼は突然転校してしまったの、わたしに何も告げずに」
「捨てられたわけだ」
「正直、捨てられたと思ったよ。見捨てられたんだって。
彼とはキスもセックスもなにもなかった。
完全なプラトニックな関係」
「だから余計に忘れられない?」
「かもしれない。あの時、彼に抱かれていたら、捨てられたって実感があったと思う。
今でもわたしは、何かを期待してる。
いつか何処かでまた彼に会える、ってね」