素顔のマリィ

山地に本音を吐いたことで、わたしの気持ちは決まっていた。

流されて、要と結婚することはできない。

どんなに苦しくても、きちんと別れなくちゃならない。

『クリスマスは家で過ごそう』

要の提案に、『了解』とだけ返信をし、わたしは貰った婚約指輪を眺めながら、要にどうしたら納得してもらえるか思いを巡らせていた。


今日だけは流されまいと、気負って向かった要のマンション。

扉を開けると、そこには美味しそうな料理の匂いが立ち込めていた。

「おかえり、マリィ」

満面の笑みで出迎えてくれた要は、どうやら自ら料理をしに台所に立っていたらしい。

「さすがに、メインディッシュはデリバリーに任せたんだ。

でも、このサラダは僕の自信作さ。

結構美味そうにできただろう?」

サラダ菜、チコリ、クレソン。様々なリーフを取り混ぜたベースに、赤ピーマン、カリカリベーコン、プチトマトがトッピングされたグリーンサラダだ。

「うん、美味しそう、何か手伝う?」

「じゃ、マリィはキャンドルに火を点して」

コートを脱ぎ、キャンドルに点火したわたしは、その揺らぐ炎の向こうに現実を思い出した。
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