素顔のマリィ
流加が世に出た。
それがわかって、踊り出したいほど嬉しかった。
と同時に、今の彼を見ることが怖かった。
彼はどんな風に今を生きて、今なにを思っているのだろうか?
わたしのことを覚えているかな?
願わくば、少しくらいは覚えていて欲しい。
「あぁ、あの時の女の子?確か、マリィって言ったよね」くらいには。
「それでだな、来月の特集用にインタビューを設定しておいた。
今、柳流加は日本にいる。
インタビューは一週間後の木曜一時、オリエンタルホテルのロビーで宜しく」
山地はあの日、そうわたしに伝えて電話を切った。
インタビューまで時間が無い。
痛い足を引きずりながら、わたしはその準備に奔走した。
カメラ撮影を考慮して、ホテルの上階に部屋を取った。
カメラマンの手配に、彼のプロフィールの入手。
幸い、絵画コンクールのエントリー票が手に入り手間が省けた。
なになに、現在は日本在住?!
彼は現在、日本の大学で美術講師として働いていたのだ。