素顔のマリィ

流加に会ったら、笑おうと誓っていたのに。

意思弱すぎだし。

カッコ悪いし。

化粧ハゲハげだし。

「……っく、ルカのバカ……」

「マリィ、触っていい?」

わたしの答えを待たずして、ルカの腕がわたしを抱きしめた。

「ん……、夢みたいだ。

ずっと、マリィをこうして抱きしめる夢を見てた。

あの頃は怖くて触れることさえできなかった。

大切だったんだ。

大切すぎて臆病になった」

「……っく、わたしは触れて欲しかったよ……」

「そうだね、僕達もっと触れ合っていれば良かったね」

これからでも遅くはない?

そう耳元で聞こえたのは幻想じゃなかったみたい。

「部屋、まだ使えるでしょ」

流加はわたしを抱き上げると、そのままホテルの部屋へと戻っていった。
< 183 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop