素顔のマリィ

夢にまで見た流加腕の中。

熱い吐息の向こうで、流加の瞳がわたしを見つめている。

「マリィ」

わたしをそう呼んで良いのはあなただけ。

一つに解け合う身体と身体。

瞼の裏には、青い空。

君と見つめたあの青い空が広がっていた。


「受賞作、観てくれた?」

「うん、写真でだけどね」

「あぁ、あの絵はまだ当分日本には戻ってこれないんだ。

残念だな、君に一番観てもらいたかったのに」

「あれ、わたしでしょ」

「もちろん」

「みて直ぐわかったよ」

「僕の中のマリィを僕はずっと描き続けているんだ。

あ、今度アトリエにおいでよ。

そこにはもっと沢山のマリィがいる。

驚かないで、ちょっと変な絵もあるから」

< 184 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop