素顔のマリィ
「俺、坂井のことずっと可愛いなって思ってた。
できたら、俺と付き合ってください」
うわっ、凄い直球、その時は一瞬そう思って身震いしそうになった。
やっぱりピッチャーだし、なんて妙に納得したりして。
いつものわたしなら、冗談でしょ、なんて受け流すところだけど。
なんだか出来すぎた決め台詞に、「いいよ」って答えたのは、鈴木君の顔が耳まで真っ赤になっていたから。
彼が平常心でその台詞を言ったのなら、きっとわたしは彼を信用しなかったと思う。
真っ赤に染まった彼の耳が可笑しくて、強気の言葉とは裏腹な彼のドキドキが伝わってきた。
それが最初に見つけた鈴木君の意外性。
多分彼は、自分を追い込んで目標を達成するタイプのアスリート。
何事にも果敢に挑戦してきたんだろうな。
うん、そこは素直に尊敬しちゃう。
好きの意味も、付き合うって意味も、そんなにはっきりと分かっていなかった10歳のわたし達。
それでもなんだか、胸がキュンとした。
だからそれが、ちょっとおませなわたしの初恋。
そう、多分。
流加に対する想いは、恋とは少し違うと思うから。