素顔のマリィ
兎に角ルカは変わった男の子だった。
その見た目も行動も。
フワフワ綿毛のような髪の毛は、顔半分を覆い隠していたから、彼が本当はどんな顔をしていたのかきっと誰もわからなかったと思う。
いつも何かに熱中するあまり、座って居る時は常に猫背で前屈み、立って居る時はたいがい走っていた。
二年一学期の二度目の席替えで、隣同士になったわたしは、そのあまりに破天荒な振る舞いに最初はただただ圧倒された。
「マリィか、いい名前だね」
机に突っ伏した顔をくるっとわたしの方に向け、流加はとても人懐っこく笑ったのだ。
「よろしく、ルカ」
気を許したのも束の間、わたしは流加に振り回されることになる。
先ず、流加は授業中、先生の話を全く聞いていなかった。
それは騒いで人に迷惑をかけるとか、そういう類の不真面目さではなく、今思えば積極的な授業脱線だったのだとわかる。
でも理科の時間、彼がおもむろに双眼鏡を取り出して窓の外を眺め出した時は本当に驚いた。
「マリィ、ほら、見てご覧よ。
カラスが巣を作ってる」
その日はたしか、生き物にはどんな種類がいるか?みたいな授業だった。
先生が黒板に、植物と動物の大きな丸を描いて、その中に生徒の答えた生き物の名前を分類しながら当てはめていく、みたいな。