素顔のマリィ
鈴木君は、アメリカ大リーグのプロ野球選手になる、という夢の実現の為、中高一貫の全寮制の学校にスポーツ推薦で進学が決まっていた。
誰もが羨むような、整った環境での野球を中心とした学生生活が保障されていた。
「俺、中学行ったら野球のことだけに専念しようと思う」
真剣な面持ちでそう告げられたのは、想定の範囲内。
「今まで楽しかった。まりっぺがいたから頑張れた。ありがとう」
そんな優等生的な決め台詞も、鈴木君らしいな、なんて。
彼との関係は極自然に、穏やかな気持ちのままフェードアウト。
今も思い出す、手を繋いで帰った通学路や、一緒に並んで座った図書館の指定席。
一度だけ、軽く触れた彼の唇の冷たさ。
「これからも頑張ってね。応援してる」
そう答えたのは、ホントのホント、偽らざる本心から。
今でも、彼の頑張りを応援してる。
夢が叶うといいね、鈴木君。