素顔のマリィ
美術の大迫先生はちょっと変わっていた。
芸術家にありがちな神経質な感じが全く無くて、むしろ浮世離れした仙人風。
顎鬚を蓄えて、肩まである長髪を、後ろで麻紐でひと括りに纏めていた。
何で麻紐?、って先生に聞いてみたことがある。
「輪ゴムは髪にからまるだろ。それに俺は身に着けるものは自然素材に拘りたいんだ。
シルクのリボンって柄じゃないし、残された選択は綿か麻の紐。
お前だったらどっちをとる?
だろ、だから俺は麻紐で髪を括っているわけさ」
見た目は仙人風だけど、歳は結構若かった。
大学卒業してから、アメリカを放浪して、それから教師になったんだって。
彼に半ば強引に入部させられたと言ってもいい。
わたしが中学2年の時、大迫先生は27歳。
歳の離れた面白いお兄さん、そんな感じだった。