素顔のマリィ
絵を描くのは好き。
つまらない授業は専ら先生の似顔絵やパラパラ漫画の製作に没頭していたし。
だからわたしのノートは落書きでいっぱいだ。
真面目に写生したりするのも好き。
自分で言うのもなんだけど、絵は結構上手いほう。
だから大迫先生の誘いにも、抵抗無く従ったのかもしれない。
いや、大迫先生だから誘われて嬉しかったのかな。
美術室の絵の具の匂いが好きだったのかも。
何故かとても懐かしい感じがしたのだ。
絵を描く時、人は皆無口になる。
放課後の美術室で、静物を真ん中に皆でイーゼルを並べてのデッサン。
シャリシャリと鉛筆の擦れる音が、部屋の中一杯に響く。
言葉を交わすわけではないのに、感じる妙な一体感。
少し埃臭い、湿った油帯びた空気。
そんな静かな熱中する時間が好きだった。