素顔のマリィ

完成したデッサンを、腹立ちまかせに黒く塗りつぶしてみた。

それはとても骨の折れる作業だった。

学校をサボって、一人で映画を観た。

普通より少し成長の早いわたしは、学生と咎められることもなく、なんだか拍子抜けした。

見よう見まねで化粧をして、夜の街を歩いてみたり。

モデル風少女の顔に、母の余所行きスパンコール付きセーターを着たわたしは、そのアンバランスさで異様に見えたと思う。

道行く人の冷たい視線が痛かった。


誰かとつるんで悪さをしたりはしない。

あくまで、わたしの単独行動だ。

それは大迫への個人的な反発と、僅かながらの期待。

わたしの混乱を彼が察知してくれるかどうか。

彼ならわたしらしさを見つけてくれそうな気がしていたのだ。
< 30 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop