素顔のマリィ
完成したデッサンを、腹立ちまかせに黒く塗りつぶしてみた。
それはとても骨の折れる作業だった。
学校をサボって、一人で映画を観た。
普通より少し成長の早いわたしは、学生と咎められることもなく、なんだか拍子抜けした。
見よう見まねで化粧をして、夜の街を歩いてみたり。
モデル風少女の顔に、母の余所行きスパンコール付きセーターを着たわたしは、そのアンバランスさで異様に見えたと思う。
道行く人の冷たい視線が痛かった。
誰かとつるんで悪さをしたりはしない。
あくまで、わたしの単独行動だ。
それは大迫への個人的な反発と、僅かながらの期待。
わたしの混乱を彼が察知してくれるかどうか。
彼ならわたしらしさを見つけてくれそうな気がしていたのだ。