素顔のマリィ
校庭脇のロータリーでは、部員が二人一組になって柔軟体操をしていた。
案の定、普段部活に出ないわたしには組む相手がいない。
ほら、わたしなんて居ても居なくてもどってこと……
と、退散を決めて、くるりと身を翻した時だった。
「逃げるなよ」
ジャージの襟を掴まれて、逃げそこなった。
「柔軟くらい、男子と組んでも問題ないだろ。
だいたい、お前でかいし、男子が丁度いいだろ。
おい、近藤、こいつの相手しろ」
呼ばれた近藤君は、確かにわたしより僅かに背の低い、まだ少年のあどけなさが残った男子だった。
「坂井さん、よろしくお願いします」
丁寧に頭を下げられ、「こちらこそ、よろしく」わたしもつられて頭を下げた。
軽く柔軟をした後、ストレッチ。
「集合!」
林先輩の号令で皆が彼の周りに集まった。
「今日は大会の出場メンバーを決める部内選考をする。
短距離、長距離、高飛び、幅跳び、それぞれ種目別に記録を測って貰う。
結果は記録と顧問と俺で決めさせて貰うからそのつもりで。
じゃ、よろしく」
げ、嵌められた!と思った。