素顔のマリィ
「はい、ゴール!4分30秒。
やるじゃない」
片手にストップウォッチを握り締めて、宮古先輩がゴールしたわたしの背中を叩いた。
「綺麗なフォームね。
林君が貴方に拘るわけが判ったわ」
林先輩がわたしに?
「多分、間違いなく貴方は長距離の選考を通る。
今までみたいな中途半端な関わり方は許されないわよ」
ちょっと意地悪く笑った宮古先輩は、なんだか嬉しそうだ。
げ、嵌められた!と、また思った。
最初から判りきったことだった筈なのに、つい我を忘れて走ってしまったわたしの馬鹿!
「あ、はやしく〜ん」
バインダに挟んだ記録用紙を胸に抱きながら、宮古先輩が片足を引きずるように林先輩に走りよっていった。
あ、先輩、足が……
足が悪いことを、取り繕う素振りも見せなかった彼女がやけに眩しかった。
彼女の前では手を抜けないな、と無駄に素直なわたしは思ってしまう。
そうなるともう、相手の思う壺だった。