素顔のマリィ
その破天荒な振る舞いとは対照的な大人びた口調が、わたしを流加に素直に従わせた。
必死につまみを回してピントを合わせながら、注意深くレンズの先を木の中ほどに向けてみた。
「見えた!
ほんどだ、カラスが巣を作ってる!」
覗いた先には、口に小枝を咥えたカラスが器用に巣を繕っている姿が大きく見えた。
くちばしを器用に使って、小枝を巣に組み込んでいる。
首を左右に小さく揺らして、その出来栄えを確かめているように見えた。
その時、確かにわたしはカラスと視線があった。
「うわっ、見つかったよ!」
驚いて双眼鏡から目を離したわたしを、流加が隣りで笑って見てた。
「こらぁ〜、二人とも何やってる!廊下に立ってろ!」
わたしがあんまり大きな声で叫んだものだから、二人して先生に叱られたっけ。
そんな状況にも流加は悪びれもせず媚びもせず、これ幸いと言った感じでわたしの手を引き廊下に出た。
「あんなつまにない授業より、廊下に居た方が絶対楽しいぜ」
流加は小声でわたしにそっと耳打ちした。
その時、耳がゾクゾクってしたのを今でも覚えてる。