素顔のマリィ
一に練習、二に練習。
大会までの二ヶ月半、わたしは陸上に明け暮れた。
結果は、新人戦1500、3位入賞。
3000にも出場したけど、1500に合わせて調整していたので、後半記録が伸びず敗退。
まぁ、次の目標が出来たと思ってよしとした。
「良くやった」
林先輩にも褒められたし。
わたしは結果に満足し、先輩に一応認められたことに、少しだけ浮かれていたのだと思う。
辛い練習を耐えたことに自信を持ち、更なる努力を先輩の為に惜しまない決意をした。
先輩にもっと認められたい。好かれたい。
下心がわたしの冷静さを失わせていた。
台風後のぬかるんだグランドで、不注意から怪我をしてしまったのだ。
「わたしのせいです」
眉間に皺を寄せ、厳しい顔つきで強張っているのは、わたしではなく宮古先輩だ。
「グランドの調子が悪いのわかってて、無理させました」
もうほとんど泣きそうな勢いの宮古先輩を林先輩が優しく慰めた。
「ユウのせいじゃないよ」
「でも、やっと調子が出てきたとこなのに……」
「軽い捻挫だ。2~3日もすれば良くなる。気にするな」
せめられるべきはわたしの筈だった。
「でも……」
「ユウ!」
叫ぶに近い大声で林先輩が呼んだ名。
そう、宮古由布子。
それは、宮古先輩の名前だった。