素顔のマリィ
先輩が卒業して、わたしは三年になった。
先輩の居ない陸上部に未練はなかった。
わたしのヤル気は、穴の開いた風船のように萎んでいった。
早々の引退宣言。
遣りきった感というよりは、燃え尽きた感。
結局、わたしは自分の為というより、先輩の為に頑張っていたのだと思う。
走ることは好きだけど、タイム云々はおまけのようなもの。
記録が伸びても、喜んでくれる先輩が居ないんじゃ意味がない。
先輩の忠告も空しく、わたしは中途半端なまま高校生活を終えようとしていた。
でも、今まで朝昼放課後と打ち込んできた部活動が無くなると、時間を持て余した。
受験生は勉強しろよ、と突っ込まれても、早々勉強できるものじゃない。
手持ち無沙汰の放課後、わたしは思いついたように美術室へと足を向けた。
ちょっとした気晴らしのつもりだった。
この学校の美術の先生はどんな先生かな?なんて。
選択で美術をとらなかったわたしは、未だ美術室へ足を踏み入れたことがなかったのだ。